網羅的図書館。

アルゼンチンの作家ボルヘス

ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編集。怪奇小説と呼ばれるジャンルだそうだけど、ファンタジーやSFっぽいなと思いました。本のジャンルというのは、あまり考えても意味のないものなのかも知れません。

ボルヘスは、アルゼンチン出身の作家です。それまで、南米出身の作家が書いた本というのは、あまり読んだことが無かったので、どんな特徴があるのかと思いながら読みました。「南米」というワードは、陽気で、ラテンのノリを想起させますが、この作品からは、むしろ寂しさや、渋い印象を受けました。

しかし、寂しさを感じるなかで、ドライな強かさという印象も受けました。特に、最後に収録されている「南部」とか。今、この文章を書いている時は、ちょうどサッカーのロシアW杯をやっていますが、南米の強かなサッカーに、通じるものもあるのかも知れません。

雰囲気と構成

作品の雰囲気は、全体には幻想的だと思いました。作者の豊かな想像力が作り出す、現実離れした世界観を感じました。その現実感の薄さは、どこか夢を見ている時の感覚に近いと思いました。なんでも起こりうるのだけれども、どこか他人ごとというか、客観的に受け入れてしまう感じです。何れにしろ、どの話からも、作者の発想の豊かさと、教養の高さを感じました。

第1部「八岐の園」と、第2部「工匠集」の2部構成になっていて、全17篇の短編が収録されています。1部と2部の違いは、特に無かったので、全17篇の短編集だと捉えて読みました。強いて言えば、1部の方が物語として工夫した仕掛けがあり、実験的だと思いました。「工匠集」の方が、人の生きざまみたいなものを描いている傾向にあるかな、と思いました。

作者のボルヘス自身の体験として語る形式の話と、いわゆる普通の物語として語られる形式の、2つの形式がありました。体験談形式の話は、少し現実味を感じる分、不気味さを強く感じました。

バベルの図書館

一番好きな話は、「バベルの図書館」という話です。ボルヘス作品の中では、最も有名な作品の一つです。すべての文字列の並びを網羅すれば、全ての本ができるという、無茶苦茶にも思えるコンセプトで作られた図書館の話です。組み合わせの数を考えたりとか、アルゴリズム的で、理系が好きな感じだなと思いました。「バビロンのくじ」という話も、ちょっと数学的な要素を感じました。作者のボルヘスが、数学好きなのかも知れないなと思いました。

なんと、この図書館を再現したWebサイトがありました。

かなりクレイジーだと思いますが、こういう試みは大好きです。

八岐の園

もう一つ、「八岐の園」という話が印象に残りました。推理小説のような、サスペンスな感じと、謎解きの要素があります。それでいて、この短編集全体に漂う幻想的な感じも持ち合わせています。短い中で、いろんな要素がうまく複合された、傑作だと思いました。最後のオチとなる仕掛けも、うまいと思いました。

関連書籍

この本は、一度紙の本で買ったあと、Kindle版でも買いました。「伝奇集」と「エル・アレフ」という本がセットになっていたので、「エル・アレフ」を読むついでに、「伝奇集」を読み直そうと思ったからです。自分は、「エル・アレフ」の方は、ちょっと冗長であまり好きにはなれませんでした。

詩集の、「創造者」も読んでみましたが、あまり面白いと思いませんでした。自分は、いまいち詩の読み方、楽しみ方が分かっていないのかも知れません。

「伝奇集」はかなり好きなので、ボルヘスの他の本も、引き続き読みたいと思っています。ちょっと読んだ感じでは、「幻獣辞典」が面白そうだなと思いました。

カテゴリー: 本の感想

memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

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