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宮内悠介さんの2作目

宮内悠介さんのSF第2作。デビュー作「盤上の夜」で日本SF大賞を受賞し、この「ヨハネスブルグの天使たち」でも、日本SF大賞特別賞を受賞しています。小川哲さんの「ゲームの王国」感想でも書きましたが、小川さんと並び、自分が今最も注目している若手SF作家の一人です。

「盤上の夜」では、切れ味鋭い視点とアイディアで、新しいSFを感じさせてくれました(感想はこちら)。今作では、切れ味抜群のアイディアはそのままに、何か作品としてどっしりとした安定感も備わっていることを、感じさせてくれます。

様々な国が舞台

この本は、5つの異なるエピソードで、構成されています。それぞれ、別々の国が舞台となっています。紛争や宗教など、社会的な問題をテーマの1つにしていると思いました。

宮内悠介さんは、東京で生まれ、ニューヨークに住み、インド、アフガニスタンを放浪した経験があるそうです。この作品の国際的な視点は、そんな経験が反映されたものなのでしょう。おそらく、作者が実際に見た現実を、部分的に描いているのだと、想像しています。どことなく、それぞれの国の、リアルな生活感を感じました(自分は、これらの国に行った経験は無いので、想像です)。

5つのエピソードがありますが、自分が好きなのは、「ハドラマウトの道化たち」です。アクション多めで、ちょっとミリタリーものぽくもあります。このエピソードの舞台はイエメンで、「ハドラマウト」というのは、イエメンの地名だそうです。調べてみると、アラビアンな感じで、観光地っぽいですね。

話の中で、市街地での戦闘シーンがありますが、自分が読みながら想像していたのも、このリンクの写真にある、高層建築郡のイメージでした。

ロボットと魂

この本の、5篇のエピソードをつなぐものは、”DX9”というロボットです。日本製のホビーロボットという設定で、登場します。歌を歌う愛玩用として生産されたDX9が、兵器や、テロ事件のシミュレータとして使われています。ただ、DX9もそこまで話の中で全面に出でてくるという訳でもなく、全体をゆるく繋げている、という役割に感じました。

DX9は、単純にプログラムされた行動をするのですが、DX9を見る人間の目を通して、”心”や”魂”みたいなものを感じる場面があります。ロボットに魂を見出す傾向は、日本人が作る作品には、多いような気がします。鉄腕アトムや、ドラえもんなどの国民的キャラクターもそうですね。人で無いものに、人間味を見出す傾向が、海外でも受けるアニメや漫画を作ることができる、一つの要因なのかもしれないと思いました。

日本人にそのような傾向があるとして、その起源は「見立て」にあるのでは無いかと、思いました。「見立て」については、龍安寺の枯山水の庭園などが有名ですね。枯山水からドラえもんへとは、少々飛躍が過ぎる気もしますが、日本文化が何らかの関わりを持っているような気はします。下記のリンクで、見立てについてわかりやすく解説されています。

関連書籍

宮内悠介さんの作品は、出版順に時系列で読んでいっています。なかなか最新作に追いついていませんが、「盤上の夜」、「ヨハネスブルグの天使たち」、「エクソダス症候群」、「アメリカ最後の実験」まで読みました。次は「カブールの園」。

カテゴリー: 本の感想

memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

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