プロジェクトXイタチ編。

川添愛さんの本

「白と黒のとびら」、「精霊の箱」に続く、川添愛さんの本です。前の二作は、話が繋がっていましたが、今作は完全に新しい話になっています。内容は、「言葉を理解する機械」を作る物語です。前作と同じく、物語の中で、理論や理屈をわかりやすく解説しています。前作よりも、内容は中高生向けになっており、平易なレベルになっています。

前作と違うのは、物語の目的自体が、「理論を解明すること」になっていることです。物語は、楽をしたいイタチたちが、言葉を理解するロボットを作ることを中心に、進んでいきます。今作は、物語の雰囲気も童話っぽくなっていて、万人向けを意識して書かれたことが分かります。

また、ところどころにユーモアというか、遊びが入っていて、力を抜いてサクサク読める感じです。個人的には、虫たちが編纂するという「湧きペディア」が好きです。

機械にとっての言葉

機械に言葉を教えるとは、どういうことか、イタチたちの苦労を通して、学ぶことができます。そもそも、機械にとっての言葉とは、0と1の信号のはずで、人間たち(話の中では動物たち)の言葉を覚えされられるなんて、たまったものではないかもしれません。

機械に言葉を教えることで、やろうとしていることは何なのかというと、自分たちのやってもらいたいことを、自然言葉で伝えたいためでしょう。プログラミング言語ではなく、自然言語の方がいいと思っているのは、思ったことをすぐに伝えられると思っているからだと思います。

しかし、イタチたちが苦労した内容にも関わってきますが、まず「思ったこと」自体が曖昧な場合があると思います。「思ったこと」、すなわち「やってもらいたいこと」が、命令者自身が100%把握していると思いがちですが、実際はそうでは無い場合が多いと思います。

普通は、話している間に、だんだんと自分の希望が形をなしていくか、またはそもそもが曖昧で、多少は相手の裁量を期待している、ということもありそうです。であれば、実際に「言葉の分かる機械」ができたとしても、使用者が「とても優秀な司令塔」で無い限り、期待のパフォーマンスは得られないのではないか、と思います。

機械の作業と人間の意図の間を、橋渡しする方法は、言葉がベストでは無いのかもしれません。いっそ、「表情」とか「声の怒気」みたいなものに絞ってしまった方が、うまく行ったりするのかもしれません。

人間にとっての言葉

機械に言葉を教える、というより使ってもらう過程を通じて、そもそも、人間はどうやって言葉を使っているのか、ということを考える必要があります。靴紐を結ぶということを、意識しだすと結べなくなる様に、普段無意識にやっていることに意識を向けるのは、少々混乱します。

結局人間も、身体や感覚に委ねているところが、思っているよりも大きいのだと思います。すべてが言葉や文章に表すことができると思うのは間違いで、むしろ記述できることの方が、少ないのかもしれません。

教訓

この物語の中では、イタチはどちらかというと「あさはかな」キャラクターとして描かれています。ですが、現実の人工知能に期待する世間一般の人たち(自分を含む)も、ここに出てくるイタチくらいの知識しか無いのではないかなと、思いました。

この物語は、童話っぽい雰囲気があります。あえて、この童話の教訓として言うなら、「物事を正しく理解することが大事」と言うことになるかと思いました。間違った理解で、過度な期待を持たないようにすることが必要だと思いました。

楽をしようとして、すごく苦労しているイタチたちの姿は、皮肉なものに思えました。最後は、イタチたちがちょっとかわいそうに思えてきました。でも、もしかしたら、あくせく働く自分たちの姿も、傍から見たら同じ様に見えるのかもしれません。

関連書籍

川添愛さんの本で、現在出ている本で読んでいない本は、ついにあと一冊、「自動人形の城」だけになりました。表紙しか見てませんが、雰囲気的には「白と黒のとびら」に近い感じがします。読むのが、とても楽しみです。

「白と黒のとびら」感想と、「精霊の箱」感想は左記リンク)

カテゴリー: 本の感想

memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

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