計算機系魔術師。

「白と黒のとびら」続編

「白と黒のとびら」が衝撃的だったので、続編が出たのを知った時は即買いでした。物語は前作から続く、魔術師ガレットを主人公としたお話です。「白と黒のとびら」の感想はこちら。今作では、計算機=コンピューターの基礎を学べます。今作も、傑作です。

パワーアップした物語

前作に引き続き、物語の中に実際の理論を織り込ませ、融合させる作者の手腕は見事です。今作ではさらに、物語の方がパワーアップしている様に感じました。主人公だけではなく、主人公の周辺の人物のエピソードに厚みを持たせ、複数の視点で物語が進行していきます。

理論の説明の方も妥協せず、よくこれだけのボリュームの説明を、物語の中に入れ込めたなと思いました。あとがきを読むと、それでも削った部分があったようですが。

楽しみ方

この本は、理論を学ぶという観点と、物語を楽しむという観点の、二種類の楽しみ方があると思います。自分は、どちらかと言うと後者の観点で、この本を楽しみました。そう決めて読み始めたわけではないのですが、読んでいる内にストーリーに惹きつけられてそうなっていった、という感じです。

チューリングマシンについては、自分も情報工学専攻の端くれなので、今までの大学の授業や、他の本から得た知識は持っていました。なので、逆にあまり読み込まずに、飛ばしながら読んだところもあります。それも少しもったいない気がしたので、改めて理論の説明のところを、しっかり読んでみたいと思います。

自分は上巻の、錬金術で「足し算のチューリングマシン」を表現するところが、少し理解するのに手間取りました(そして、ちょっと読み飛ばしました)。論理回路で、加算器や減算器の仕組みを勉強した時の事を思い出しました。

知識ゼロから理解可能か

一つ疑問に思ったのは、自分は少し計算機の仕組みの知識があったので理解の助けになりましたが、全く触れたことのない人が理解できるのかな、ということでした。自分はこの作者は天才だと思っていますし、物語の中に理論の説明を入れる鮮やかな手腕に、疑いの余地はないと思っています。その作者の説明をして、全くのゼロからスタートする人に、どれだけ理解させられることができるのか、単純に興味があるのです。それが出来ているとすれば、こういう”理系の理論解説本”(とでも言いましょうか)の可能性が、かなり広がったと言えるのではないかと思いました。

自分は、この本の内容を専門知識ゼロの状態から、理論を理解しつつ、かつ物語を楽しみつつ読み進めるのは、少し困難では無いかなと思いました。やはり、両方に注意を払って読み進めるには、少し両方のボリュームが大きすぎるような気がします。2周くらいはする必要があるかなと思いました。あくまで、自分の想像の範囲での話ですが。

この本は、本屋ではだいたい理系の専門書の棚に置いてあるので、そもそもこの分野に興味があり、知識を少しは持っている人をターゲットにしていると思います。

関連書籍

この作者の、「働きたくないイタチと言葉がわかるロボット」という、人工知能を題材にした本は、専門知識がほぼゼロの人向けの本だと思います。作品によって、ターゲットを変えて書いているのでしょう。

言語理論の分野は、一般には縁遠い分野であったと思いますが、もはやコンピューター無しでは成り立たない世の中になっているので、理解の助けになる良質な書籍は、需要が高まっていると思います。作者の川添愛さんには、ますます作品を増やしていただきたいと思います。自分も最新刊の「自動人形の城」をまだ読んでないので、これから読みたいです。


memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

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