それを買った理由。
著者と内容
Amazonで上位に来ているから、間違いないでしょうと思って安易に買った本。買った理由は安易かも知れませんが、特にビジネスに関する物事を深く考える、きっかけになりました。
著者はクレイトン・M・クリステンセン。「イノベーションのジレンマ」という本で有名で、経営学の巨人と言っていいんじゃないでしょうか(実際身長も2mくらいあるみたいです)。現在はハーバード・ビジネススクールの教授を務めているそう。
この本では、ビジネスでイノベーションを起こすためには、”顧客の片付けたいジョブ(用事・仕事)”に注目すべし、という事を説明しています。
この本を読んで、マーケティングに関する、有名な格言を思い出しました。
ドリルを買う人が欲しいのは「穴」である。
この格言も、顧客が真に何を欲しているのかを考えることの重要性を説いていると思います。
果たして”理論”か?
しかし、今までも「顧客目線で考える」ことの重要性は散々言われてきたわけで、自分はいまいち、これが新しい”理論”と言えるのかしっくりきませんでした。”理論”かどうかには懐疑的ですが、「顧客目線で考える」よりも、「顧客の片付けたいジョブを明らかにする」の方が、よりやるべき事が具体的になっているとは思います。なので、新しい理論というよりかは、今までの「顧客価値」を重視する考え方の、延長線上にある考え方として捉えようと思いました。
そういう捉え方をしたとして、この本は、顧客の抱える問題に注目する事が重要であることを裏付ける、示唆に富んだエピソードが多数載っています。この本を読んで、その重要性を再認識できれば良いのではないかと思いました。
ミルクシェイクが片付けたジョブ
この本には、ジョブ理論的な考え方をしたエピソードが幾つか出てきます。その中で、「どんなジョブを片付けるために、ミルクシェイクを買ったのか」というエピソードが、印象に残りました。ミルクシェイクを選んだ(この本風に言うと「雇用した」)理由は、味とか価格とかではなく、退屈な通勤時間に気を紛らわすためだった、というものです。
このエピソードを読んだ時に、ああ自分もそういう考え方で商品を選んでいることはよくあるかもな、と思いました。例えば、本を買うのは内容を読みたいからではなく、時間を潰すためだったとか。そういう事を続けていって、ある日結構な数の本を読んだことに気がついて、あと付けで「自分は本好きである」と言うことにしてしまっているような気がします。もしそうであるなら、自分にとっては、時間の潰せる本が価値が高いということになります。
これはある程度は真実であると思っていて、内容の楽しい本は読んでいると時間が速く過ぎる様に感じ、時間が潰せるので、読んでいて楽しいと感じる本は良い本である、という事になるわけです。でも実際は本から新たな情報を得ることが、1番の大きな動機になっていると思いたいですけどね。結果としてそうなっていればいいか。
この本が片付けたジョブ
何かメタ的な感じになってきましたが、自分がこの本を買ったのは、どんなジョブを片付けたかったからか?と考えてみました。仕事に役立てるため?評価の高い本を読んでいる、という自尊心を満たすため?喫茶店で過ごす時間を、有意義に使うため?ブログで感想を書くため?etc…
おそらく、上に挙げたようなジョブは、全て正解なんだろうなと思いました。思うに、人が片付けたかったジョブというのは、重要度の差があれ一つでは無いのではないでしょうか。片付ける”べき”ジョブという表現にまでした時に、1番重要度の高い、最低限これだけは満たして欲しいジョブが浮かび上がって来るのではないかと思いました。たぶん、ビジネスで考えないといけないのはそこで、それを抽出するのには、ビジネスマンとしてのテクニックや経験が要るんだろうなと思いました。