高層縄張り争い。

ハイテク高層マンションに住む人達の生活や人間関係が少しずつ少しずつ壊れて、原始的・野性的・攻撃的になっていく様子が描かれた話。きっかけはあるけれども劇的に変わるのでは無くて、病に侵される様に徐々に進行していくのがリアリティがあると思った。崩壊していく様は読んでいる時には必然の変化とすら思えるくらいだったが、読み終わって最初の部分を見返してみると、雰囲気や価値観の変化に驚く。毎日見ている人の少しずつの変化は気にならないが、久しぶりに会う人の変化には驚くのに似ていた。

最終的には暴力・殺人・略奪が日常的に行われるような世界になってしまうが、住んでいる人はその環境を受け入れている感じで、むしろ幸せそうだとすら思う。それは今まで内に溜め込んでいたフラストレーションを外に放出して、感情的に生きられる世界になったからだと思った。抑圧された物が放出される時には快感を伴い、本能的にその快感を求める方向に進んで行く。テクノロジーは進化しても、人間は動物的な部分を内に持っていて何時でもそれが暴発しうるのではないかと思わされた。

J・G・バラードの作品は初めて読んだが、SFというジャンルに分類されているけれども今まで読んだSFとは違い、テクノロジーから離れて原始的になっていくというところが面白かった。人間の内面的な部分に焦点を当てて描かれているところに読み応えを感じた。

この物語の最後の世界は、歪なんだか正常なんだか分からなくなってしまう。その価値観が狂う感じが面白くもある。作者の別の作品も読んでみたい。


memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

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