日本をSF的に内から外から。

日本がテーマのSFアンソロジー。全13編のうち、特に気に入った話の感想を書く。


もののあはれ

ケン・リュウ作。

宇宙で起こったトラブルに立ち向かうストーリーに、漢字・俳句・囲碁・自己犠牲といった日本的なものが散りばめられている。この本のトップバッターとしてテーマを伝えるのに分かりやすくピッタリの話だと思った。作者は中国系アメリカ人で、アメリカから見た日本人の精神という感じが伝わってくる。


内在天文学

円城塔作。

この本の中で一番好きな話。一本の線路が貫く町、星空の下、変わり者の老人、冒険への予感と言った、シンプルな要素が作り出す世界観がとても気に入った。気の強い相方の正体はベタな仕掛けだけど、きれいに決まってやられた。夏休みの思い出感ある。


樹海

レイチェル・スワースキー作。

富士の樹海、幽霊、自殺と言った、背筋が冷たくなるようなオドロオドロしい雰囲気が漂う話。人間の登場人物は二人で、気丈に振舞っていて威勢がいい感じだけど、それぞれ事情を抱えている。悩みと怨念の掃き溜めみたいな樹海の中で、まだ生きている二人の人間臭さが引き立っている。


ゴールデンブレッド

小川一水作。

少年兵が異星人の文化に徐々に馴染んでいく話。最初は反発していた主人公が、徐々に懐柔されていく様子が読んでいて楽しかった。スペース日本の農村という奇妙な取り合わせも癖になる感じ。アイネラさんも魅力的。


山海民

菊地秀行作。

これも未知の世界へ飛び出す冒険の話。RGPの序盤感ある。青空を背景にモンスターの危険に晒される集落に、別世界からのストレンジャーが紛れ込んだのをきっかけに物語が動き出すみたいな。こういう基本を抑えた話は嫌いじゃないです。


慈悲観音

ブルース・スターリング作。

むわっとするような不快な雨の森の湿気と泥だらけの紛争地帯が舞台の、とにかく爽やかさからは無縁の泥臭ささが伝わってくる。ジャーナリストの吉田がベラベラまくし立てる感じには本当にイライラさせられるくらいキャラが立っていると思った。


自生の夢

飛浩隆作。

間宮潤堂のダークヒーロー感がいい感じ。過去と現実と仮想とデータの境界が分からなくなる感じは酔いそうになるくらい強烈。設定は複雑だけど頭で理解するより先にイメージが走る感じがする。


日本人が書いたから、とか外国人が書いたから、というフィルターをかけずに読むことが出来たと思う。あまり日本がテーマということで全体がまとまっている訳でもないと思った。日本を意識した話もあれば、意識していない話もあり。一つ一つの話として楽しんで読んだ。伊藤計劃のThe Indifference Engineは英語で読めず。英語勉強しよう。

カテゴリー: 本の感想

memom

都内在住会社員。 物心ついた時から読書好き。 読んだ本を忘れない様につらつらと感想を書いていきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です