アンドロイドVS人間の話を書いたSF。
SF映画の金字塔的な存在として、「ブレードランナー」という映画があることを最近知り、いつか見てみようと思っていた。そんな折、新宿のブックファーストでこの本がおすすめされていたので手にとってみたら、この本がそのブレードランナーの原作であることを知った。この本も前から読んでみたいと思っていたので、これを機に読んでみることにした。
面白いSFを読んだ時はいつも緻密で奇抜な設定に驚かされるが、この本もまたそうだった。どうやってこの細かい設定を考え付き、そして現実に体験しているかのようなリアル感のある物語が書けるのだろうと感心してしまう。そして、その設定が自然に理解できるような説明が入る。かつそれは説明臭く無く、物語の一部として違和感無く読める。訳者もさぞかし大変だろうと思うが、映像の通信が「映話」という言葉になっているのが個人的には好きな所。訳する前はどんな言葉だったんだろう。
緻密な設定で描き出される未来世界とSFらしいアクションも魅力だが、この本は何と言っても人間とアンドロイドとの会話や戦いを通じて「人間であること」について考えさせられるのが重要な点だと思う。アンドロイドに感情移入し始めていることに悩む主人公に、読者もまた感情移入してしまう。
昨今人工知能が話題になっているが、聞いたところによるとSFによくあるような人工知能が反乱を起すという展開は無さそうなのだという。その理由は人工”知能”と人工”生命”はまた違って、生命で無ければ自己を保存するという思考にはならないのだという。反乱を起こす位のアンドロイドが出てきた方が面白いのにと、不謹慎ながら思ってしまうが。
一番好きな場面は、レイチェルのこのセリフ。
「あなたを心から愛しているわ」とレイチェル。「もし、どこかの部屋であなたの生皮を貼ったソファーにでくわしたら、きっとわたしはフォークト=カンプフ検査の最強反応を示すわよ」
非常に人間臭いセリフ回しだと思う。